名前が汚いから嫌だな

変容する便器の日常をお届け

but Love surpreme しかし 過去は 最低だ

今日、元カレと再会しそうになる夢を見た。元カレが新幹線に乗ってやって来るまでの間、2時間ほど人と会ったり話したり、苦痛の絶頂を迎えるまでの過程の夢だった。苦しかった。

失恋したばかりの時は数ヶ月、毎晩のように元カレが絡んだ夢を見ていた。
築地でタカアシガニを買って高速を爆走して元カレのアパートのドアポストにギチギチに押し込むようなファンシーで可愛らしい夢だけではなく、大親友のような仲のよかった大学の後輩と地元のホームセンターで金属バットと蛍光塗料と超大量のゴキブリを購入して、金属バットで窓ガラスを割って侵入して部屋内で蛍光塗料をぶちまけリアルなスプラトゥーンをしてから大量のゴキブリを解き放って笑いながら蟹を食べに行った、地獄の鬼のような所業を行う夢も見ている。正夢にはしていない。好きでもない人のために犯罪者になるなんて馬鹿げてるし、好きだった人のために犯罪者になるのはもっと馬鹿げてる。


昨日の夜、推定60代の男性にレンタルショップ内で「にいちゃん、金貸してくれねえか」と言われた。無関係の赤の他人から直接的な物乞いをされるのは人生で2度目だ。
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1回目は5年前、市原佐都子のQの『地下鉄』
(このブログ読む人、ここの舞台写真とか好きそうだからURL貼っておくね)http://qqq-qqq-qqq.com/?page_id=269
の観劇に向かう最中だった。
豊島区にて推定70代男性に『パチンコ屋のトイレにサイフを忘れて、すぐに取りに帰ったけどその時には既に無くなっていた。自宅まで帰るバス代が無い、歩いて帰ると2時間かかってしまうからお金を貸して欲しい』と言われた。

幾ら必要か聴いたら(600円)と言われたのでお金を渡した。

おじさんは去り際に「いつかきっと、また会えるよ、その時まで覚えてるから!」と叫んでお辞儀をして町の路地へ歩き去って行った。

そのあと観劇後に知り合いにこの話をしたら「ダメだよ、それ、騙されているよ」と言われた。
お辞儀をした時によれよれのパーカーが擦れて立てたカシャカシャ…という音だったり、太ももに添えられた浅黒い手の甲の色やフォルムだったり、土踏まずの辺りが裂けた小豆色のスニーカーだったり、顔を上げた時の 顔そのものは忘れてしまっているのにそれ以外の事ばかり鮮明に覚えている。

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「にいちゃん、金貸してくれねえか」
「……」
「幾らもってんだよ」
「……」
「…」
「…7枚借りるんで、それギリギリ位ですね」
「減らせば良いんじゃねえか?」
「…」
おじさんは自分より20センチほど身長が低く野球帽を被ってたが、時偶、目に光が、キラキラとは違う、値踏みするみたいなギラついた光が点った目が、チラチラと見える。

怖くなってきたので、おじさんに背を向けて足早に無人レジへ向かう、おじさんは付いて来る。話し掛けられまいと体を右に翻すと右後ろに、左に翻すと左後ろに来るので傍から見たらバスケットボールの動きみたいになっていたに違いないと思う。
キュッキュと音を立てながら無人レジへと到着すると店員がこちらを一瞥してレジから出て、向かってくる、と、即座におじさんは踵を返してDVDの戸棚が乱立する迷宮へと走り去って行った。その様子はさながらオペラ座で神出鬼没の怪人ファントム、或いはジャングルでのプレデターのようで、人間じみていなかった。


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DVDを借りて、外に出る。

レンタルショップの駐車場に蝉が落ちてて、「死ぬの早いな」って思って拾った所に勢いよく乗り込んできた黒い軽自動車に乗った金髪の若者達に「ヒヒィーwww」と全開の窓から煽られて驚いて「ウァ!!」とセミを手放したら飛んでって窓から入ってスーパーボールがバウンドするみたいに軽自動車の中を跳ね回ってた、ヤンキーたちの悲鳴がド田舎の駐車場にこだまする。
悪くないのに悪くなるやつだと思って、本気で逃げた。


「いつかきっと、また会えるよ、そのときまで覚えてるから」


なんでこんな時に思い返すのだろう。最悪だ。
最悪。最悪。超超超最悪だ。

逃げ切って落ち着いてから、今後DVDを返す時や、借りる時、野球帽のおじさんや金髪の若者達に怯えなくちゃいけないのか、と怖くなってしまい情緒が不安定になったから変な夢を見たのだろうか。

変な夢抜けの今朝、寝起きで友達のモイタナナミと電話した。電話口からセミの鳴き声が聴こえる。もぴちゃ(モイタナナミ)は授業をフケていたらしくて「助手の人に見つかったらヤバイんだよねぇ…」と言っていて、お喋りを始めてしばらくしたら、助手の人に見つかったらしくて、「ちょっとごめん!!」のあとに「コラァーーー!!モイタァァァ!!」という助手らしき人の叫び声とともに電話が切れた。

電話の中で「便器くんが前に『自分自身の過去のファン』って言っててかっこいいって思った、私は私の過去が嫌いだから…」って話してくれた。僕は僕の過去のファンだけど、やっぱり過去は最高の芸術かつ最悪最低の地雷だから、日や時間によって感じ方が違う。おとぎ話や昔話も成長すると受け取り方が変わるのと同じだ。今朝は最低だった。良くも悪くも過去は過去。はぁ〜死にてえな。絶対死んでやらないけど。

 

寝巻きに使っているお気に入りのグレーのTシャツが最近臭い。汗をかいてTシャツの内側をフンフンと嗅ぐ、かなしい。
洗濯機に放り込んで半裸のままリビングで紅茶を飲んだ。
ガラス戸の外に昨日の黒い軽自動車が見えた気がして身構えたけど気のせいだった。ため息と自動車が走り去っていく音が混じって消えた。